アルゴリズム名は、データの保存場所や鍵の保護についての証拠の代わりにはなりません。
保存時の暗号化(Data-at-Rest)は保存されたデータを保護し、エンドツーエンド暗号化は許可された端末間のメッセージ内容を保護します。メッセンジャーのセキュリティを評価するには、両方を確認する必要があります。アルゴリズム名や「耐量子」という言葉だけでは、端末内のデータベース、メディアキャッシュ、エクスポートしたファイルがどのように保護されているかは分かりません。
モバイルフォレンジックでも、「ファイルを入手すること」と「その暗号化された内容を読むこと」は同じではありません。結果は、端末の機種、OSのバージョン、ロック状態、データの種類、利用可能な鍵、調査方法によって変わります。ツール名だけで、あらゆる端末からの抽出の成否を予測することはできません。
混同してはいけない3つの層
| 層 | 何を保護するのか | 重要な問い |
|---|---|---|
| メッセージのエンドツーエンド暗号化 | 許可された端末間でやり取りする内容 | 誰が鍵を持ち、相手をどう確認するのか |
| 端末ストレージの暗号化 | ストレージ内に保存されたファイル | 関連する鍵をいつ、どの権限で利用できるのか |
| アプリ内およびバックアップの保護 | データベース、エクスポートデータ、別のコピー | どのデータが保護対象で、各コピーの鍵はどこにあるのか |
例えば、チャットからギャラリーに保存した画像は、そのメッセンジャーの保存方針だけに従うものではなくなります。クラウドバックアップや手動エクスポートも、別々に確認する必要があります。チャットのバックアップの安全性のガイドでは、この違いを説明しています。
BFUとAFUは何を意味するのか
これらの用語は通常、起動後に初めてロックを解除したかどうかを基準に、端末の状態を表します。
- BFU(Before First Unlock): 電源を入れた後、または再起動した後、利用者がまだ一度もロックを解除していない状態です。
- AFU(After First Unlock): 最初のロック解除が済んだ状態です。現在は再びロック画面が表示されていることもあります。
この2つのラベルは、セキュリティの点数でも、フォレンジック調査の確定的な結果でもありません。AFUは「すべての鍵を抽出できる」という意味ではなく、BFUも「一切のデータにアクセスできない」という意味ではありません。
Androidのファイルベース暗号化では、Credential Encrypted(CE)領域は利用者のロック解除後に利用可能になります。Device Encrypted(DE)領域は、Direct Bootで必要な機能にも利用できます。各データの保存場所と鍵の方針が重要であり、すべてのファイルが同じアクセス状態にあるわけではありません。
AESという名前より鍵管理が重要な理由
データベースの暗号化は、その鍵も適切に保護されて初めて役立ちます。暗号化したファイルの隣に無保護の鍵を置いても、認証や安全なハードウェアに結び付いた鍵と同じ保護境界にはなりません。一時ファイル、添付ファイル、アプリのログがどのように扱われるかも明確にする必要があります。
Android Keystoreでは、エクスポートできない鍵を利用でき、一部の鍵は安全なハードウェアで保護できます。ただし、鍵をエクスポートできないことと、攻撃者がその鍵を使えないことは別です。Androidのドキュメントによると、アプリのプロセスを乗っ取った攻撃者は、鍵自体を抽出できなくても、その鍵を利用できる可能性があります。
見た目のアプリロックも、データベースが独立した鍵で暗号化されている証拠には必ずしもなりません。そう主張するには、当該バージョンの保存設計、認証条件、実際の動作を確認する必要があります。
Livaraについて何が結論できるのか
Livaraのセキュリティと脅威モデルのドキュメントは、製品の設計と境界に関する提供者の説明であり、独立したフォレンジック試験の代わりにはなりません。
特に、v7形式によるアイデンティティの復元を、チャット履歴のバックアップやローカルデータベース暗号化の証拠と考えてはいけません。LVR1のようなメッセージングプロトコルの説明だけでも、端末の各ファイルがどの鍵で、どの状態で保護されるかは分かりません。
この記事では、商用フォレンジックツールや特定バージョンのLivaraのデータベースを試験していません。したがって、「どのフォレンジックツールもLivaraを読み取れない」「ML-KEMがストレージ内のすべてのファイルを暗号化する」といった主張は、根拠のある結論ではありません。
メッセンジャーの評価で求めるべき証拠
試験に基づかないランキング表ではなく、次の具体的な問いを確認してください。
- どのアプリのバージョン、端末の機種、OSのバージョンを調査したのか。
- メッセージ本文、ファイル、サムネイル、キャッシュ、手動エクスポートは、それぞれどこに保存されるのか。
- データベースの鍵はどのように生成、保管されるのか。その利用は認証を条件としているのか。
- ロック中、ロック解除後、アプリの実行中で、どのような違いがあるのか。
- バックアップには正確に何が含まれ、そのパスワードや復元鍵を誰が持つのか。
- 独立した報告書、試験方法、限界、調査日が公開されているのか。
これらの問いへの答えがなければ、「暗号化されている」という言葉だけでは製品を比較できません。技術文書の公開には価値がありますが、すべての主張が独立に検証されたのと同じであるかのように紹介してはいけません。
日常の保護に役立つ対策
適切なパスワードで端末をロックし、OSとアプリの更新を適用し、ロック画面に機密性の高い文章が表示されるのを制限してください。ギャラリー、ダウンロードフォルダー、バックアップ内の追加コピーも、意識して管理しましょう。メッセンジャーの外にあるコピーには、別の保護方針が適用される場合があります。
機密性の高い会話では、相手の端末が安全な状態かどうかも重要です。アプリを開いた後の文章をマルウェアが読めるなら、問題は暗号化ファイルの抽出だけではありません。Androidのセッションセキュリティのガイドでは、この境界を詳しく説明しています。
よくある質問
端末の電源が切れていれば、情報の抽出は不可能ですか?
いいえ。端末の状態は要因の1つであり、結果を保証するものではありません。ハードウェア、ソフトウェア、データ、調査方法の詳細を明らかにする必要があります。
メッセージの耐量子暗号化はストレージの安全性を保証しますか?
いいえ。鍵交換やメッセージの保護は、ローカルストレージの設計と検証の代わりにはなりません。
アカウントを復元すると、すべてのメッセージが戻りますか?
必ずしもそうではありません。アイデンティティの復元、アカウントへの再接続、履歴の復元は、3つの異なる機能です。端末を買い替える前に、当該製品とバージョンのバックアップ範囲を確認してください。



